分科会 Subcommittee

ビジネスと知的資産・知財法研究分科会

第7回ビジネスと知的資産・知財法研究分科会(2013年2月18日開催)のお知らせ

 サイクロン式掃除機を発明したジェームズ・ダイソン氏が、「低迷する日本の家電業界再生のためには?」というTVレポータの問いに対して答えて曰く、「コピー商品を作るな」であった。これは、感情的・道徳的な意味ではなく、経営戦略としての意見であると理解した。このダイソン氏のメッセージをきっかけに、昨年12月の大阪での知財学会第10回学術研究発表会にて、下記内容のセッションを本分科会で開催した。
 多数の方々に参加頂いたが、場所が大阪であったため、関東から参加できないメンバーもいた。また、セッションを通じ、新たな知見も得られた。そこで、今回大阪でのセッション報告をふまえ、さらに、本テーマを深堀して、新たな時代の知財経営戦略の在り方を考察できれば、との思いで、分科会を開催することとしました。
 また、今後の分科会の方向性についても皆様のご意見を戴ければ幸いです。
 皆様のご参加お待ちしております。申し込み方法は下記をご参照下さい。

【日 時】 2013年2月18日(月) 18時30分~21時
【場 所】 アゴラ東日本橋 (東京都中央区東日本橋3-4-10 アクロポリス21ビル 4F)
http://www.agora-h.jp/
【タイトル】 模倣と創造の関係性と日本企業における知財戦略・経営戦略のあり方
第10回年次学術発表会(大阪)での分科会セッション報告会
【講演者】
佐久間 陽一郎(佐久間コンサルティングオフィス代表、スタンレー電気社外監査役、
 日本工業大学専門職大学院技術経営研究科客員教授)
高堀 博之(株式会社キングジム執行役員 知的財産部長兼経営企画部長)
中島 淳(太陽国際特許事務所所長、工学院大学客員教授、静岡大学客員教授、
 知財戦略本部委員 弁理士、博士(工学))
遠山 勉(株式会社知財ソリューション代表、秀和特許事務所顧問、
 株式会社キングジム社外監査役 弁理士・特定侵害訴訟代理登録)
【参加費】 500円(知財学会員)、1000円(非知財学会員)
【参加申込】下記URLのフォームに必要事項を入れて申し込みお願いします。
http://ip-solution.jp/gakkai.html
「イベント名」欄に:
第7回ビジネスと知的資産分科会2月18日 と記入してください。
また、知財学会のメンバーか否かもご記入願います。
【内 容】 
 模倣は知識の伝搬に必要であり、人間の成長、社会の発展に不可欠である。これは、knowledge spilloverの問題でもあるが、知的財産を守る側にいると、模倣は悪いものと捉えがちになる。そもそも学習による創造活動には模倣が必要である。Think differentと言ったスティーブ・ジョブズ氏は、「偉大な芸術家は盗む」と言い、実際、数多くの知識を盗み,模倣したが、成果として、大いなるイノベーションを生んだ。
 また、知識が財産的価値を持つためには、それ相当の伝搬・普及(模倣)がなされ、社会に益をもたらすことが重要である。昨今の「標準化」の重要性は、その背景に知財の持つこのような本質的部分があることに着眼する必要がある。
 知的財産権の制度は、この模倣を許容しつつ産業政策の面から模倣に制限を加える。以上のことから、知的財産を考えるとき、模倣と創造の関係性を探究することはとても重要である。
法は産業発達のため、知財の利用を促進するが、競業秩序維持・公平の観点から一定の模倣には制限を加えている。知識を得るには頭脳へと知識をコピーする必要があるし、技能を収得するには他人の技を盗む必要もある。
 問題は、得た知識をどう使うかである。儲かるからデッドコピーをするのか。法に触れないという判断だけで模倣をしてビジネスは成功するのか。もはやクリエイティブ・コモンズの時代だというのか。鉄の技術がヒッタイトから中国に至るまで1000年かかったという。インターネットの普及、さらにクラウドの時代、情報の伝搬速度は著しく早い。このような時代、しかも産業の成熟した日本において、模倣を考察し知識創造のあり方を問い直すことは重要である。
 本セッションは、模倣の善悪を論じるものではない。模倣のあり方、創造のあり方を考察し、低迷する日本産業がグローバル社会で生き残るために必要な日本のオソジナリティとは何かを経営戦略、知財戦略の視点から議論する。