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日本知財学会 第22回産業功労賞
日本知財学会では、知的財産分野における活動で顕著な業績があった法人を表彰するために、2004年に産業功労賞を創設しました。国内法人会員を対象に理事会で審査を行い、毎年表彰を行っています。
理事会での厳正な審査の結果、本年度の産業功労賞は、日清食品ホールディングス株式会社および弁理士法人太陽国際特許事務所の2法人が選出され、2025年6月9日の総会で表彰式を行いました。
受賞法人 | |
日清食品ホールディングス株式会社 |
受賞理由 | |
日清食品ホールディングスは、知的財産を自社技術・ブランドの保護のためだけでなく、業界全体の発展にも積極的に活用してきました。特に、世界初のインスタントラーメン「チキンラーメン」の発明により即席麺という新たな食品カテゴリーを作り出すとともに、粗悪品の市場からの排除と即席麺業界の信頼醸成を目的として業界団体を設立し、製法特許を公開するという当時としては革新的なオープン&クローズ戦略を取りました。また、世界初のカップ麺である「カップヌードル」は、需要が頭打ちになっていた即席麺市場に「カップ容器入り即席麺」という新たなカテゴリーを創出し、特許権を一定程度オープンにすることで、業界の発展に寄与しました。 近年においては、「カップヌードル」の象徴である上下の帯型図形(通称:キャタピラ)の位置商標や「チキンラーメン」の象徴的な配色を色彩商標として取得するなど、新しいタイプの商標制度を活用し、自社の重要なブランドの独自性の強化にも成功しています。また、「チキンラーメン」の麺塊上にたまごを上手く載せるための「Wたまごポケット」や、動物由来原料不使用の「プラントベースうなぎ 謎うなぎ」について知財ミックスによる権利化を推進し、技術、デザイン、ブランドにより差別化を図るといった多層的な知財戦略を構築しています。 このような日清食品ホールディングスの知財戦略は、企業の持続的成長を支える重要な要素の一つであり、日本の知的財産権制度の発展にも寄与するものです。また、他の企業にとっても模範となるべきものであり、本賞の授与にふさわしいものと判断いたしました。 |
受賞法人 | |
弁理士法人太陽国際特許事務所 |
受賞理由 | |
弁理士法人 太陽国際特許事務所は、特許、意匠、商標の各分野において、企業の知的財産戦略を包括的に支援する体制を整え、特許事務所として総合的なサービスを提供しています。特に知的財産を活用した企業の競争力向上に寄与し、持続可能な成長を支える重要な役割を果たしてきました。 文部科学省の「地域イノベーションエコシステム形成」事業における知的財産分野のコンサルティング業務や、知財アクセラレーションプログラムへの参画を通じて、大学発ベンチャーの創出・支援に積極的に取り組んできました。これらは、知的財産戦略の実務的活用と産業界の発展に寄与してきたものに他なりません。 DABUSと呼ばれるAIが自律的に創作した発明について、知的財産権による保護を求める国際プロジェクトがあり、世界20か国近くで特許出願が行われています。同事務所はプロボノ活動として参加し、DABUSの代理人として日本における出願・権利化を遂行したり、各国の最新情報を収集して提供したりすることで、AIと特許に関する議論を牽引してきたといえます。 また、知財戦略推進本部、弁理士会、学会をまたいだ活動により、知財政策、実務、学術研究・教育の橋渡しを行ってきました。 これらの取り組みは、日本の知的財産権制度の発展に寄与するとともに、企業の持続的成長を支える重要な役割を果たしており、その功績が高く評価され、本賞の授与にふさわしいものと判断いたしました。 |