学会誌・資料 Journal

日本知財学会誌 第5巻第1号掲載

特許出願による技術流出を防止するための先使用権制度の考察
Consideration of Prior User’s Rights to Prevent Outflow of Technology Disclosed in Patent Applications

増田 つばさ
Tsubasa Masuda
日本知財学会誌 Vol.5 No.1 p.81-93(2008-8-20)
Journal of Intellectual Property Association of Japan Vol.5 No.1 p.81-93(2008-8-20)

<要旨>
本論文は,日本の特許出願の多くが防衛出願であるため,出願公開制度により海外に技術が流出しているという問題意識に立ち,かつ,その背景に現行法の先使用権制度の機能不全がある可能性を踏まえ,この技術流出を防止するための方策を検討したものである.具体的には,現行法制下での企業の特許又は営業秘密の選択行動に関して,開発企業は,同一技術の場合先使用権の訴訟費用が高いほど特許を選択することをモデルを用いて示した.この分析結果を踏まえ,先使用権の訴訟費用,すなわち先使用権の立証コストを低減する方策として,①特許法第79 条で課せられている事業の実施又は準備の要件の撤廃,②発明思想が記されている書面を特許庁に提出し原則として20 年間保管されるソローの封筒類似の制度の創設を提言し,併せて③特許法第94 条の実施の事業とともにする移転を制限し,特許権者による先使用権者の実施の事業の先買制度の創設の提言を行った.
<Summary>
There are growing concerns about the outflow of technology from Japan through the publication system before examination because most patent applications are defensive ones. In light of this point, in this paper I will address the measures we should take to prevent the outflow of technology based on the possibility of functional failure of existing prior users’ rights.

<キーワード>
先使用権,立証コストの低減,事業の実施又は準備の用件,ソローの封筒,実施の事業と
ともにする移転の制限
< Keywords>
Prior User’s Rights, Reduction of Cost to Prove, Requirement of Working or Arrangement for Business, SOLEAU Envelope, Restriction of Transfer the Prior User’s Right with Business