■第二回 知財の証券化と第三者評価機関の必要性について
東北大学大学院情報科学研究科講師 浜田良樹
(1) 日本資産流動化研究所が残した教訓
2003年3月31日、ひとつの財団法人が解散した。経済産業省所管の「日本資産流動化研究所」である。何をやっていたかというと、「特定債権等に係る事業の規制に関する法律」(特債法)12条に基づいて、特定債権(リース・クレジット債権)の流動化に際して[1]ある期間(6ヶ月以内)に流動化しようとする債権の量が過大でないか等を審査する(法6条調査)ことと、[2]個別の案件に即してSPVに債権を譲渡する場合の法的枠組み、キャッシュフローの安全性等を詳細に調査する(法3条調査)という業務をやっていた。
特債法上の資産流動化商品には証券取引法上の有価証券に該当しないものがある。法律ができた平成5年、かつて抵当証券が社会問題化した経験を踏まえて、投資家保護の観点からこのような調査が行われるようになった。ところで、ABSのように公募型債券の場合は、3条調査とは別に格付け機関からAaa級の格付けを取得しなければ、実務上誰にも売れない。オリジネーターにとっては類似した調査を二重に受けることになり、調達コストを上昇させた。
3条調査の目的を逆に考えれば、流動化した商品が一般の投資家に流れなければ特段の問題はないということでもある。だから、一般投資家をスキーム上排除する、調査不要となる例外(特債法68条・69条)が本流として確立し、調査を受けるのは例外になった。特債法による流動化実績は順調に伸びたものの、調査へのニーズは減少し、ついに解散に至った。
(2) 第三者評価機関の必要性
企証券化にあたって、その資産の価値を適正に算出することは重要な機能である。日本には膨大なシーズがあり、潜在的な金融資産もあり、投資家もいるのに、調査機能が不十分だという批判はもっともである。しかし、特許庁自身に行わせるとか、第三者評価機関を作って行う等の提案については賛成できない。それは平成5年の特債法制定時の議論の繰り返しであり、構造改革に反し、オリジネーターに負担を強いることになるからである。
知的資産流動化商品が普通のサラリーマンに購入されるようになるのはまだ数年先のことである。それまでは、資産の流動化に関する法律施行令4条の規定に基づき、弁護士・公認会計士・監査法人・弁理士または特許業務法人が行うしかない。弁護士にアニメーションの評価ができるかという指摘はあろう。しかし、知財に関する評価ノウハウなどはどこにもない。本年3月のピンチェンジ&スカラ案件でも、いろいろな主体が結集して一から勉強してノウハウを得たのである。Moody'sは過去にそういうノウハウを蓄積し、スピルバーグの映画の著作権料を裏づけとする債権にAaaを付したりしており(1997.11 Dreamworks Film Trust)、この上に調査機関の審査を義務付ける実務上の必要はない。当面は手探りだが、いずれ新しいノウハウが生まれる。 |