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第一回 信託による知的財産の活用
監査法人トーマツ 長谷部 智一郎

 2003年1月30日に産業構造審議会 知的財産政策部会から「知的財産の信託化に関する緊急提言(案)」が提出された。この緊急提言(案)によると、知的財産の円滑な活用を図るために、現在信託業法において制限している信託財産に知的財産を含めること及び一般事業会社の信託業への算入等が検討されている。この知的財産について信託が可能となった場合、主に?証券化等による資金調達の増加及び?グループ内の知的財産管理の効率化等が考えられる。

(1) 証券化等による資金調達
 現在、著作権等の知的財産については特別目的会社や組合等を通じて証券化が行われている。この知的財産の証券化は既に完成した知的財産だけでなく、制作途中の知的財産に基づいた資金調達も行われており、物的担保等を持たないベンチャー企業には重要な資金調達手段である。今後、信託が活用できることになれば、知的財産の証券化による資金調達がより活発になり、企業の資金調達方法が多様化することが考えられる。但し、信託が可能となっても証券化等を行う場合には、知的財産の価値評価をどのように行うべきか、知的財産固有のリスクなどについて、十分な検討が必要である。

(2) グループ内の知的財産管理の効率化
 企業グループ内の各会社がもつ知的財産を知的財産管理会社等において一括管理することにより、知的財産業務の効率化を図ることができる。しかしながら、知的財産を売却により知的財産管理会社に移す場合、税務上、売却価額の算定(寄付金・受贈益課税)及び売却損益課税等の問題が発生する。これに対して信託が活用できることになれば、知的財産を帳簿価額のまま所有権を移転することができる。すなわち売却価額(時価)を算定する必要がなく、また売却損益も発生することなく、所有権を知的財産管理会社に移すことができ、企業グループにおける知的財産業務を効率化することができる。但し、受託者である知的財産管理会社は、分別管理を行い、受益者に対する信託配当の支払い等適切な管理を行う必要がある。またクロス・ライセンスや侵害訴訟等の知的財産特有の事象があり、信託財産の管理・運用方法については十分検討が必要である。

   知的財産の信託には、上記以外に様々な活用方法があるため、信託が認められれば知的財産の有効活用が促進されると考える。他方、現在認められている資産と異なり、知的財産固有の利点・欠点があるため、法律、会計及び税務上の取扱について、金融庁及び経済産業省等の関係省庁において今後十分検討のうえ、早期に実現されることを期待する。

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