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【緊急アピール】知財高裁の設立は「知的財産立国」に不可欠

日本知財学会知財制度戦略構想分科会
2003(平成15)年6月16日


 知的財産関係事件を専門的に扱う独立の高等裁判所を創設することが世上話題になっているが、当分科会は、それが知財立国を実現するため不可欠だと考える。その理由は、下記の通りである。

1.知財立国実現のため不可欠の仕組み
 アメリカ合衆国がいち早く知識経済に移行するについては、特許事件などを集中的に扱う専門の控訴裁判所が1982年に創設されたことが大きく寄与した。これは既に、世界の常識である。韓国やシンガポールなど、知識経済への移行を図る国々は次々とそれにならい、中国も続こうとしている。わが国が総理直属の知的財産戦略本部を設置したことは広く知られており、どのような改革がなされるのか、各国は興味津々で見守っている。にもかかわらず知財専門の裁判所一つ作ることができないようでは、改革の先行きは知れた、日本はやはり何もできない国だ、知財立国などかけ声だけで実際には何もできまい、という見方が一挙に広まるだろう。知財事件は各国で同時並行的に進むことが多いので、そのような見方が拡がれば、世界を代表する大企業もハイテク・ベンチャーもわが国の裁判所を頼らなくなり、アメリカやシンガポールの司法機関を頼りにするだろう。裁判の空洞化は進む一方である。  わが国が真剣に知財立国の実現を図るなら、知財高裁の創設は不可欠の第一歩である。「東京高裁に管轄を集中したのだから知財高裁を創設するのと実質的には変わらない」という議論があるが、それは、現状を出ないことをもってよしとする、世界に通用しない議論である。

2.専門技術的な事実の的確な認定
 知財事件では、非常に専門的な事実が裁判の勝敗を分けることが多い。そうした事実の認定に信頼が措けないと、企業の命運を左右しかねない事件を、安心して裁判所に委ねることはできない。専門の裁判所を設立するメリットは、正しく事実を認定できる専門家を多数揃えられる、ということである。
 この点については、専門員制度を活用すれば東京高裁のままでも問題に対応できる、という声も聞こえる。たしかにそれは現状にくらべて改善であるが、十分な措置とはとうてい言えない。非常勤の専門員を務めることなど、理工系の研究者にとってのメリットは、皆無に近い。しょせんは片手間のボランティアである。報酬もわずかなものであろう。それでもなおかつ、理工系研究者としての社会的責任として非常勤の専門員にも協力するべきであるという考え方はあるが、そんな立場で、何億円もの価値のある技術について、企業の命運を左右するような事実認定を責任をもってやれと言われたら、やはり尻込みをする研究者は多いだろう。善意のボランティアのみに頼って制度改革を怠ろうというのは、基本的な方向が間違っているのではないか。高度な技術的事項をきちんと認定できるような仕組みを作るためには、独立した裁判所を設けることが不可欠である。

3.世界最高の知財裁判を
 知財高裁を設立するのは、世界最高の知財裁判を実現するための第一歩である。産学連携もベンチャー融資も専門人材の養成も、知財に関わるほとんどすべての面で日本は遅れている。理工系の研究者のほうがまだ国際競争力がある。せめて司法サービスくらい世界最高水準にしないと、とても知財立国はおぼつかない。今回の改革は、知識を基盤にする経済への移行という、大規模な構造改革の一環である。「知」の創造拠点としての大学の改革や、知財を扱う専門職業人の集中的な育成などとともに、大きな視野で改革を進めねばならない。「知財高裁の設立」は、日本が知識経済社会へ移行することを、世界に表明する強力なメッセージである。
 世の中には、「他国の司法制度と競争する必要はない」という声もある。理工系の研究者から見れば、これまた奇妙な理屈である。国の基盤である司法制度を世界最高水準のものとすることは、日本再生の基本である。いつまでも他国の後追いで満足していたのでは、しょせん二番手にしかなれない。しかも、二番手を目指していたらいつの間にか列の後尾に追いやられているというのが、いまの世界の厳しい現実である。世界最高を目指してはじめて、各国と対等に競争ができる。理工系の研究者にとって常識的なそうした発想が、司法界や法学界の方々にも常識となるよう、希望したい。

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